矯正 表参道のこれからの目標

資本主義国だからといってカジノ経済と赤字大国(マイナス500兆ドル近い深刻な経常収支)に特徴づけられる「アメリカ型」をまねる必要はまったくなく、もっと労働者・国民の生活や人権を大切にする「日本型資本主義」を追求し実現する努力をすべきではないか。 アジアでそういう資本主義づくりのリーダーになるぐらいの夢を日本の支配層にも期待したいところだが、それは無理だ。
異常な競争にストップをかけることのできる社会的力を有するのはやはり労働組合ということになる。 前述のように「世界最大の金持ち国」でありながら、デフレ・不良債権・株安などに苦しむという屈折した「妙な資本主義国日本」になったのはなぜか。
80年代にかけて世界一の「国際競争力」をつけ、集中豪雨的な輸出攻勢をかけ、そのツケとしてのバブル経済こそ、「妙な日本」をつくりあげた直接の土壌ではないか。 にもかかわらず、財界・政府はこれにこりず、いまなお「バブル再来」という「後ろ向きの夢」を見続け、「構造改革」・リストラに狂奔している。

こういうやり方で一時的に企業業績が好転しても、自民党の有力者さえ心配するようにリストラの氾濫が「合成の誤謬」を引き起こすことはすでに証明ずみのことである。 「国際競争力」という妖怪を恐れず、それに惑わされず、雇用を守り、賃金など労働条件を改善し、社会保障を充実させるために、労働者・国民の力を結集し運動を強めることこそ、この国に住む人々を救う道、「もっとましな日本」「福祉重視社会」をつくる大道であることを強調したい。
いま、その条件が後述のとおり、醸成されているのだ。 ついに「完全失業率」が5%の大台に乗った(2001年7月)。
実質的には約2倍(10%程度)に上ろう。 年間3万人を超える近年の自殺者増の背景にも、こうした失業の急増がある。
今後、K流の「構造改革」が「骨太の方針」(「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」)にそって強行されれば、完全失業率が7、8%に上る事態も十分ありうる。 (02年に「骨太の方針」失業率が急テンポで上昇するなど、日本の一雇用問題が深刻の度を増したのは90年代の後半からである。
それは「構造改革」の本格的な展開の時期と符合する。 「構造改革」の強行が雇用問題を深刻化させているのだ。
本章はその関連の解明を、「小泉構造改革」が「骨太の方針」として打ち出された2001年の段階でおこなったものである。 それがいまエスカレートしている。
「骨太の方針」は、「技術革新と「創造的破壊」を通して、効率性の低い部門から効率性や社会的ニーズの高い成長部門へヒトと資本を移動する」とし、「不良債権問題を2、3年で解決することを目指す」とも主張している。 これが強行されれば大量の失業を発生させることは必至である。
「骨太の方針」の発表後、これに勇気づけられたかのようにH・T・Hその他のIT関連の大手各社が、軒並み万単位の大量人員削減の計画を発表している。 このようにいま、地すべり的「大失業時代」到来の材料が出揃っている。

現実に「雇用破壊」が深刻になっている。 しかし、だからといって今後、「完全失業率」が2桁に向けて一直線で上昇するといった単純な展開にはならないだろう。
なぜなら財界・政府が、さまざまな手法で、失業者をパートや派遣などの不安定雇用労働者として、サービス分野を中心にどこかに「はめ込む」という、きわめて校滑な「失業・雇用政策」を強めているからである。 つまり、パートなど不安定雇用の大量化で、失業者の一本調子での増大に歯止めをかけ、社会不安の軽減をはかりつつ、結局、労働者をより安く、より効率的に使う方策を追求するこれが財界・政府の雇用戦略の基本だからである。
これはまた企業や政府にとって安上がりの「失業対策」でもある。 失業者を不安定雇用労働者として「泳がせる」ことで、失業者に対する雇用保険等の支出を節減できるからでもある。
こうしたことを念頭に、以下、第一に失業・不安定雇用の実情をみる。 第2に、深刻な事態をもたらした要因・背景を探る。
第3に、「骨太の方針」における雇用戦略そのものを岨上にのぼせ、その強行を許せば今後一雇用問題がどうなるか、考えてみたい。 ここでは第一に、完全失業率5%(2001年8月26日、総務省が7月の「労働力調査」の結果として発表)の内実・意味を考える。
実質の失業率は、それを遥かに上回る点にも言及する。 第2に、男女別・年齢別などで失業率が大きく異なっていること、そしてパートなど不安定雇用の増大が、失業増とともに深刻な雇用問題であることを強調する。
また、失業者のなかに「自発的離職者」が多いとして、失業している労働者にも責任があるかのような一部の論調にたいしても一言する。 問題点をはっきりさせるため、基礎的なことから確認する。
「完全失業率」とは、完全失業者数を、15歳以上の労働力人口で割った数字である。 ここで分子の「完全失業者」というのは、毎月末の調査期間一週間(「労働力調査」)にまったく仕事に就いていず、求職活動を実際におこなっており、かつ仕事があればすぐ職に就くことが可能な人である。

一方、分母の15歳以上の「労働力人口」というのは、就業者と完全失業者の合計で、別言すれば、「15歳以上人口」から学生・家事従事者・高齢者などの「非労働力人口」を除いた数字である。 わが国では1953年以来、このようにして「完全失業率」が算出されてきた。
60年代から日本経済の高度成長が破綻する70年代の初頭まで、日本の「完全失業率」は1%台であった。 それが2%台になったのは日本経済が低成長期に入って間もない77年からである。
その2%台が1994年まで長期にわたって続いた。 ところが、95年に3%台になってからは、98年に4%台になり、2001年7月にはついに5%台になるというように近年になって急テンポで「完全失業率」が上昇している。
01年7月の「完全失業率5%」(正確には5・02%)は、右の推移からあきらかなようにそれまでの最悪の事態である。 その前々月の5月が4・89%、前月の6月が4・92%であったから、5%到達は「骨太の方針」提起時点ですでに「時間の問題」となっていた。
つまり、「完全失業率5%」は「骨太の方針」実践の結果ではない。 それに先行する一連のリストラの結果である。
「骨太の方針」の実践の結果は今後あらわれるという前後関係を、ここで確認しておこう。 いまみたように「完全失業率5%」という数字は、むろんそれ自体として重大である。
その数字発表後の労働者・労働組合の悲鳴と怒りはもとより、財界や政府の困惑・狼狽ぶりからも、その重大さは明白である。 しかし、実質的な失業率は、その約2倍の10%程度と考えられる。
事態は遥かに深刻なのだ。 こうした指摘は、民間研究機関や体制派研究者からもなされている。
たとえば橘木俊昭氏は、「N新聞」で「わが国では、潜在失業者(求職意欲喪失者)を含めれば、失業率は公表失業実質的な失業率と公表された「完全失業率」との間に大きな差が生じるのは、主として、つぎのような理由による。 第一に、「完全失業者」の要件があまりにも厳しすぎる。

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